相続登記・遺言・不動産の手続き|足立区・北千住の司法書士こばやし事務所

相続人に認知症の方がいる場合、遺産分割協議はできる?成年後見と相続登記を解説|司法書士こばやし事務所

2026年10月05日 15:00

「父が亡くなりましたが、相続人である母には認知症があります」

「母の代わりに、子どもが遺産分割協議書へ署名してもよいのでしょうか」

このようなご相談をいただくことがあります。


遺言書がない場合、亡くなった方の遺産を分けるためには、原則として相続人全員による遺産分割協議が必要です。

そのため、相続人の中に認知症の方がいる場合、その方の判断能力の状態によっては、遺産分割協議をそのまま進めることができません。


ただし、認知症と診断されているからといって、必ず遺産分割協議ができないわけではありません。

この記事では、相続人に認知症の方がいる場合の遺産分割協議や相続登記の進め方、成年後見制度が必要になるケースについて解説します。

■認知症の相続人がいると遺産分割協議はできない?

遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員が協議の内容を理解し、自分の意思で同意できることが必要です。

認知症の方が相続人に含まれている場合でも、遺産の内容や分け方、それによって生じる結果を理解して意思表示ができれば、遺産分割協議に参加できる可能性があります。

一方、判断能力が十分ではなく、協議の内容を理解することが難しい場合には、そのまま遺産分割協議を進めることはできません。


認知症という診断名や要介護度だけで判断するのではなく、遺産分割協議を行う時点におけるご本人の状態を個別に確認する必要があります。


■家族が本人の代わりに署名することはできません

認知症の相続人が遺産分割協議の内容を理解できない場合でも、子どもや配偶者が本人の代わりに署名し、実印を押すことはできません。

同居している家族や、日頃から財産管理をしている家族であっても、当然に本人を代理する権限が与えられているわけではないためです。

本人の意思に基づかない署名や押印によって作成された遺産分割協議書は、無効となる可能性があります。

その遺産分割協議書を使って相続登記を行った場合、後になって相続人間のトラブルや登記のやり直しにつながるおそれもあります。


■判断能力が不十分な場合は成年後見制度を検討します

遺産分割協議の内容を理解して判断することが難しい場合には、家庭裁判所へ成年後見開始などの申立てを行うことを検討します。


成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が十分ではない方を法律的に支援する制度です。

家庭裁判所が選任した成年後見人等が、本人に代わって財産管理や契約などを行います。


法定後見制度には、ご本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3つの類型があります。


遺産分割協議について代理が必要な場合、どの制度を利用するのか、どのような代理権が必要なのかは、ご本人の状態や手続きの内容によって異なります。


■成年後見人は家族が自由に決められるわけではありません

成年後見開始の申立てをする際には、家族などを成年後見人の候補者として挙げることができます。

ただし、誰を成年後見人に選任するかは、家庭裁判所がご本人の状況や財産の内容、親族関係などを考慮して決定します。

申立人が希望した方が必ず選任されるわけではなく、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選任される場合もあります。


また、成年後見人等に対する報酬は、家庭裁判所の判断により、ご本人の財産から支払われることがあります。


■成年被後見人の法定相続分は守られます

成年後見人は、他の相続人の希望に合わせて、自由に遺産の分け方を決められるわけではありません。

成年後見人には、成年被後見人であるご本人の財産を守る役割があります。

そのため、成年後見人がご本人を代理して遺産分割協議を行う場合、本人の取得する財産が法定相続分を下回るなど、本人の財産が減るような内容の遺産分割は原則として認められません。


一般的には、成年被後見人の法定相続分が確保された内容で遺産分割協議を成立させる必要があります。


例えば、父が亡くなり、母と子が相続人となるケースで、成年被後見人である母の法定相続分が2分の1であれば、母が遺産全体の2分の1に相当する財産を取得するように遺産分割の内容を決めます。


子が実家を取得する場合には、母が法定相続分に相当する預貯金を取得するなど、財産全体で取得額を調整することになります。

「母は施設に入っているため実家は必要ない」

「子どもが母の生活費を負担している」

「相続人全員がこの分け方に同意している」

という事情だけで、成年被後見人である母の取得分を法定相続分より少なくすることはできません。


成年後見人が選任されると、成年被後見人の財産を守ることが優先されるため、家族だけで考えていた希望どおりの遺産分割にならない可能性があることにも注意が必要です。


■成年後見人も相続人の場合は特別代理人が必要になることがあります

例えば、父が亡くなり、母と子が相続人となるケースを考えてみましょう。

認知症の母の成年後見人に子が選任されている場合、子は次の2つの立場を持つことになります。

・母を代理する成年後見人としての立場
・自分自身も遺産を取得する相続人としての立場

この場合、母と子の利益が対立する可能性があります。


そのため、成年後見監督人が選任されている場合などを除き、母のために家庭裁判所へ特別代理人の選任を申し立てる必要が生じることがあります。


家族が成年後見人に選任されていても、すべての手続きを単独で進められるとは限りません。


■成年後見制度は遺産分割が終わっても続きます

成年後見制度について、特に注意していただきたい点があります。

成年後見制度は、今回の遺産分割協議だけを行うための一時的な制度ではありません。

遺産分割協議や相続登記が終わった後も、原則として、ご本人の判断能力が回復するか、ご本人が亡くなるまで続きます。

「遺産分割が終わったので成年後見制度をやめたい」と家族の希望だけで終了させることはできません。

成年後見人には、その後も家庭裁判所への定期的な報告や財産管理などが求められます。

申立てを行う前に、制度が継続することや、その後の負担についても理解しておくことが大切です。


■認知症の相続人がいる場合の手続きの流れ

一般的には、次のような順序で手続きを進めます。

1.遺言書の有無を確認する
2.戸籍を集めて相続人を確定する
3.相続財産の内容を調査する
4.認知症の相続人の判断能力を確認する
5.必要に応じて成年後見開始などを申し立てる
6.成年後見人等を交えて遺産分割協議を行う
7.遺産分割協議書を作成する
8.相続登記や預貯金の解約などを行う


家庭裁判所への申立てや成年後見人等の選任には、一定の期間がかかります。


相続した不動産の売却を予定している場合は、成年後見人等の選任、遺産分割協議、相続登記を終えなければ売却を進められないことがあります。


売却時期が決まってから手続きを始めると間に合わない可能性があるため、早めに状況を確認しておきましょう。


■遺言書があれば成年後見制度を使わずに済む?

亡くなった方が有効な遺言書を残している場合、遺産分割協議を行わず、原則として遺言書の内容に従って手続きを進められます。


そのため、相続人の中に認知症の方がいても、遺産分割協議のためだけに成年後見制度を利用せずに済む可能性があります。


ただし、遺言書の内容や遺産の状況によっては、別の手続きや検討が必要になることもあります。


また、ご本人がすでに遺言書を作成できる状態にない場合、家族が代わりに遺言書を作ることはできません。


将来の相続に備える場合は、ご本人の判断能力が十分なうちに、財産の内容を整理し、遺言書の作成を検討することが重要です。


■相続人に認知症の方がいる場合は早めにご相談ください

相続人に認知症の方がいる場合、遺産分割協議ができるかどうかは、ご本人の状態によって異なります。

認知症と診断されているからといって、一律に遺産分割協議ができないわけではありません。


一方で、判断能力が十分ではない状態で手続きを進めたり、家族が本人に代わって署名したりすることはできません。


成年後見人が選任されて遺産分割協議を行う場合には、成年被後見人の法定相続分を確保し、ご本人の財産を守る内容にする必要があります。


そのため、家族が希望していた遺産の分け方をそのまま実現できないこともあります。


また、成年後見制度が必要になると、家庭裁判所での手続きも含め、相続登記の完了までに時間がかかることがあります。


特に、相続した実家の売却を予定している場合は、売却のスケジュールと合わせて手続きを検討する必要があります。




司法書士こばやし事務所では、相続人の確認、戸籍収集、相続財産の整理、遺産分割協議書の作成、相続登記まで、一連の手続きをサポートしています。


ご事情に応じて、家庭裁判所へ提出する書類の作成や、不動産会社と連携した売却手続きについてもご案内します。

「相続人である親に認知症がある」

「遺産分割協議を進められるか分からない」

「相続した実家を売却したい」

という段階でもご相談いただけます。


当事務所へのご依頼を検討されている方は、初回相談を無料で承っています。

足立区・北千住で、認知症の方が関係する相続や相続登記についてお困りの方は、司法書士こばやし事務所へお問い合わせください。


【相続登記・不動産相続のサービス案内はこちら】


【遺言書作成のサービス案内はこちら】


【ご相談・お問い合わせはこちら】


司法書士こばやし事務所
足立区・北千住

女性司法書士がすべての案件に直接対応します