遺言書を書こうと思ったら、まず何をする?司法書士がすすめる5つの準備
2026年08月19日 16:48
「そろそろ遺言書を書いた方がいいのかな」
60代、70代になると、そんなことを考える機会が増えてくるかもしれません。
「子どもたちにできるだけ迷惑をかけたくない」
「自分が亡くなった後も、家族には仲良くしてほしい」
「自宅は、できればこの子に残したい」
このような思いがあっても、いざ遺言書を書こうとすると、
「何から始めればいいのか分からない」
という方は少なくありません。
実は、いきなり遺言書を書き始める必要はありません。
まずは、ご自身の財産や家族の状況を整理することから始めてみましょう。
今回は、相続手続きを数多くお手伝いしてきた司法書士の立場から、遺言書を書く前に確認しておきたい5つのことをご紹介します。
特に、不動産をお持ちの方には、ぜひ確認していただきたいポイントがあります。![]()
1.まずは「誰が相続人になるのか」を確認する
最初に考えていただきたいのが、
「自分が亡くなった場合、誰が相続人になるのか」
ということです。
「相続人なら、もちろん分かっている」と思われるかもしれません。
例えば、配偶者と子どもが2人いれば、「妻と子ども2人が相続人」と考えるのが一般的です。
しかし、家族関係によっては、そう単純ではない場合があります。
例えば、
前の結婚で子どもがいる
子どもがすでに亡くなっている
子どもがいない
兄弟姉妹が相続人になる可能性がある
などの場合には、思っていた人とは違う方が相続人になることがあります。
特に、子どもがいないご夫婦は注意が必要です。
「夫婦だから、夫が亡くなったら妻が全部相続する」と思っている方もいらっしゃいますが、必ずしもそうとは限りません。
自分が亡くなった場合、誰が相続人になるのか。
まずはここを確認してみましょう。
2.自分がどんな財産を持っているのか整理する
次に、ご自身の財産を整理してみましょう。
例えば、
自宅
その他の土地や建物
預貯金
株式・投資信託
生命保険
その他の財産
などです。
このとき、「だいたいこれくらい」と考えるのではなく、できるだけ具体的にしておくことが大切です。
特に不動産をお持ちの方は、「自宅だけ」と思い込まず、所有している不動産を一度すべて確認してみてください。
昔購入した土地や、親から相続した土地、遠方にある不動産などは、家族がその存在を知らないこともあります。
不動産をお持ちの方は、ここを確認してください
遺言書を書く前に、不動産についてぜひ確認していただきたいことがあります。
それは、
「その不動産は、誰の名義になっていますか?」
ということです。
「自分が住んでいる家だから、自分の名義だろう」
と思っていても、登記簿を確認してみると、実際の名義が違っていることがあります。
例えば、
亡くなった親の名義のままになっている
夫婦の共有名義になっている
土地と建物で名義が違っている
昔相続した土地の名義変更をしていない
といったケースです。
こうした状態で遺言書を作ろうとすると、「誰の財産について遺言を書くのか」というところから確認が必要になります。
また、遺言書に不動産を記載する場合には、登記事項証明書などを確認し、不動産を正確に特定できるようにしておくことが大切です。
「東京都○○区にある私の家を長男に相続させる」
というような書き方ではなく、実際の不動産の表示を確認しておくことで、相続が始まった後の手続きもスムーズになります。
不動産は、預貯金のように「○○銀行の口座」と簡単に特定できるものではありません。
そのため、不動産をお持ちの方ほど、遺言を書く前に名義や不動産の表示を確認しておくことをおすすめします。
3.「誰に何を残したいのか」を考える
財産を整理したら、次に、
「誰に何を残したいのか」
を考えてみましょう。
例えば、
「自宅は長男に残したい」
「預貯金は子ども2人で分けてほしい」
「妻にはできるだけ自宅と生活に必要なお金を残したい」
などです。
ここで大切なのは、最初から法律的に完璧な文章を作ろうとしないことです。
まずは、ご自身の言葉で、
「私は、こうしたい」
という希望を書き出してみてください。
それだけでも十分、最初の一歩になります。
4.「なぜ、そのように残したいのか」も考えてみる
もう一つ、ぜひ考えていただきたいのが、
「なぜ、その人にその財産を残したいのか」
ということです。
例えば、
「長男が長年、自宅の面倒を見てくれたから」
「長女にはこれまでいろいろ助けてもらったから」
「妻がこれからも安心して暮らせるように、自宅を残したい」
などです。
こうした思いは、必ずしも遺言書にすべて書かなければならないわけではありません。
ただ、自分自身の気持ちを整理するうえでは、とても大切です。
また、財産の分け方に偏りがある場合には、なぜそのようにしたのかという気持ちを「付言事項」として遺言書に残すという方法もあります。
「法律上、誰に何を渡すか」だけでなく、
「家族にどんな気持ちを伝えたいのか」
も考えてみてください。
5.どのような遺言書にするのかを考える
ここまで整理できたら、最後に「どのような遺言書にするのか」を考えます。
遺言書にはいくつかの方式がありますが、一般の方に身近なのは、
自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言は、ご自身で作成することができるため、比較的取り組みやすい方法です。
一方、公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため、内容や作成方法について専門家に相談しながら進めることができます。
「どちらが正解」ということではありません。
財産の内容や家族関係、遺言に込めたい希望によって、適した方法を考えることが大切です。
特に、
不動産を複数所有している
子どもがいない
前婚の子どもがいる
相続人以外の人にも財産を残したい
財産の分け方に大きな差がある
といった場合には、自己判断だけで作成するのではなく、司法書士などの専門家に一度相談することをおすすめします。
遺言書は「書き始めること」より「考えること」から
ここまで読んで、
「遺言書って、思っていたより難しそう」
と感じた方もいるかもしれません。
でも、最初から完璧な遺言書を作ろうとする必要はありません。
まずは、
① 誰が相続人になるのか確認する
② 自分の財産を整理する
③ 不動産の名義を確認する
④ 誰に何を残したいのか考える
⑤ その気持ちを整理して、必要であれば専門家に相談する
この順番で、一つずつ考えてみてください。
特に不動産をお持ちの方は、早めの確認を
司法書士として相続手続きをお手伝いしていると、
「もっと早く不動産の名義を確認しておけばよかった」
「親がどんな希望を持っていたのか、元気なうちに聞いておけばよかった」
というケースに出会うことがあります。
不動産は、相続が始まってから初めて確認すると、思わぬ問題が見つかることがあります。
だからこそ、遺言書を書くことを考えたら、まずは**「自分の不動産がどうなっているのか」**を確認してみてください。
登記事項証明書を取得して、名義や不動産の表示を確認するだけでも、準備の大きな一歩になります。
「何から始めればいいか分からない」なら、それで大丈夫です
遺言書を作ろうと思っても、
「何を書けばいいのか分からない」
「自分の場合、誰が相続人になるのか分からない」
「不動産の名義を確認したことがない」
という方は少なくありません。
だからこそ、最初から一人で完璧にしようとしなくても大丈夫です。
まずは、ご自身の財産と家族について整理してみる。
そして、分からないところがあれば専門家に相談する。
それだけでも十分、相続への備えになります。
遺言書は、家族を縛るためのものではありません。
自分が亡くなった後、家族が迷ったり、困ったりしないように、自分の希望を残しておくためのものです。
「そろそろ遺言書を作っておこうかな」
そう思ったら、まずは紙とペンを用意して、
「私の財産は何がある?」
「誰に何を残したい?」
「家族に何を伝えておきたい?」
この3つを書き出すところから始めてみてはいかがでしょうか。